AIで普通の動画を3D動画に変換する

 翌日。季節は終わりかけてはいたが、日差しが肌に痛い上に、アスファルトの照り返し、おまけに多くの人通りの所為で大通りはこの時期夏には通行者を不快にさせていた。そしてその中に、制服姿で見るからに重そうな鞄を提げ、気だるそうに歩く輝翔と、その少し後方を歩く絵波の姿もあった。
「あっち〜……何で休みなのにこんな暑い中補習なんか受けなきゃなんねぇんだよ……」
「あんたが望んで申し込んだんでしょ。そんなに文句言うなら申し込まなきゃよかったのに。希望制なんだから……」
「そーだけどさ……せめてクーラーくらいいれてくれたっていいじゃないか……あんな暑い中八十分も集中してられるかっての……」
 絵波に冷たく応えられ、輝翔は不貞腐れる。
「ねぇ、輝翔……」
 突然トーンの下がった声に、輝翔は顔を上げて絵波を見た。
「前にも聞いたけどさ…………この世界が、夢だって思う事……ない?」
 彼はしばらく彼女を見つめ、ふっと顔を背けた。絵波の複雑な表情を、敢えて見ないようにするように。
「……お前にしては珍しいな。二回も同じ事聞いてくるなんて」
 彼の思う「絵波のおかしな質問」は、過去何十回となく聞いたが、同じ質問を二度以上受けた事は、一度もなかった。
「私にしてはって、どういうことよ」
「……別に。何度もそんな質問してくる事なんか、一度もなかったし……」
 輝翔の引っかかるような言葉に、絵波は歩く足を止め、複雑な表情で俯いた。
「……夢を、見たの」
「……夢?」
 絵波が立ち止まったのに気付き、輝翔も足を止め、絵波の方を振り向き、聞き返した。
「うん。辺りには、何もなくって、ただ真っ暗な空間で……目の前に、誰かがいたの。誰かわからないんだけど、私はその人を知ってたの。よく……知ってる人だったの」
「……どういうことだ?」
 輝翔は言葉の意味がよく理解出来ず、顔をしかめた。
「んっと、よく言えないんだけど……誰かまでわからないんだけど、物凄く、よく知った人だって感覚だったの……」
「…………で?」
 輝翔はしばらく黙っていたが、すぐに先を促した。
「で……私は、その人の目の前で、少しずつ、姿を消されていったの……。抵抗することも、声を上げる事も出来ずに、足元から、少しずつ、少しずつ……。その人は、目の前で笑ってた。口元だけで……私の人生を操るのが、面白くてたまらないって感じに……」
 彼女は右腕を体に巻き付け、ぐっと力を込めた。必死で、身体の震えを抑えるために。
「だから、怖いの……もし、これが現実になったら……自分が操り人形だったらって思うと、怖いのっ……」
 輝翔は無言で、震える彼女を見つめた。無表情で……心の内を隠す、無表情で。
 やがて、輝翔は彼女の左手をとり、歩き始めた。彼女の顔を、敢えて見ないようにして。
「……所詮、夢だろ? 夢如きに振り回されて悩んでんなよ……」
 諭すような輝翔の言葉に、絵波は呆然としたが、静かに微笑み、引かれるままに歩いた。
「……『所詮夢』、か……」
 彼女の手を引きながら、彼は小さく、誰にも聞こえないように呟いた。
 うだるような暑さは、いつしか彼らの周りから消え去っていた。

 

 

第三話へ続く

              ORIGINAL NOVELSへ              TOPへ